What’s Up, 神主さん?
第10回 お盆=祖先祭祀
2020-07-29
お盆の時期は地方によって異なりますが、私の故郷、島根県松江市のお盆は8月13日から16日。私の実家もお盆をします。「えっ、神社もお盆?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。実は、日本人が行っている祖先祭祀の慣習は仏教が入る以前から古代の日本人が脈々と受け継いできたもの(神道)です。ただ、その慣習を「お盆」と言うようになったのは仏教伝来後。「お盆」という名称は、ある修行僧が行った母親の供養の伝説「盂蘭盆会」に由来しています。
太古の昔から日本ではこの時期、祖霊が子孫を訪ねると考えられており、お墓を掃除し、お供え物をします。お墓参りのためにお盆休みがあるのですが、昨今は、お墓参りよりもレジャーのための休みになっているようで残念です。
仏教の家では僧侶を呼んで読経を上げてもらいますが、神道の家では神主が御霊祭(みたままつり)をします。神道ではお葬式も「神葬祭」と言うように、「祀る」儀式は「祭り」になります。
「お盆祭り」というのを時々耳にしますが、「お盆」は上述したように仏教用語由来で、「祭り」は神道の「祀る」儀式。両方が習合してしまっているのは、八百万の神という概念を根底に持っている日本人ならではと言えます(社家でも「祖先祭祀」を「お盆」と言うように……)。また、「〇〇春/夏/秋祭り」というのもよく見ますが、「祀る」儀式がないのに「祭り」というのは……?と考えてしまうのは私が神主だからでしょうね。
ご参考までに私の実家のお盆行事を紹介しましょう。
お盆までにお墓を掃除し、13日朝にお墓に花をお供えします。また、祖霊舎(それいしゃ/みたまや。大型の神棚で、亡くなった家族の霊が祀ってある霊爾が納められています。神道では亡くなった人はやがて神様になります)に、菓子、果物、花をお供えします。この日から15日まで毎日、夕方にお墓に行き、水を替え、灯籠にろうそくを灯します。
15日午後、祖霊舎の前で御霊祭をした後、家族でお墓参りをし、御霊祭でお供えした玉串をお墓にお供えします。16日夕方、お墓に行き、灯籠の中のろうそくなどを片付けます。松江では、16日の夕方から大橋川で灯籠流しが行われます。松江仏教会が主催のこの灯籠流しを見ると夏の終わりを感じたものでした。
コロナの影響で帰省が叶わない今年、今いる場所でご先祖様にお供えものをし、感謝と敬意の気持ちを表してはどうでしょうか?
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。