What’s Up, 神主さん?
第11回 秋分の日と「彼岸」
2020-08-26
昼夜の長さが同じになる秋分の日は年によって変わり、今年は9月22 日火曜日。秋分の日はまた、彼岸の中日とも呼ばれます。彼岸にはお墓参りをして、ご先祖様に感謝の気持ちを伝えます。
「先月、お盆でお墓参りをしたのに、また?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。先祖を敬うのは日本が古の時代から続けてきた慣習です。昼夜の長さが同じになる秋分の日(と春分の日)は、「この世」と「あの世」が最も近くなり、ご先祖様に感謝が伝わりやすいと古代の日本人は考えたようです。お盆がご先祖様を家に招く行事なら、彼岸はこちらからご先祖様に歩み寄る行事と言えるでしょう。
日本人は何故これほどまでに先祖を大切にするのでしょう?
日本人の文化慣習の礎である神道では、亡くなったご先祖様は家族の守り神になってくださると考え、ご先祖様を大切にしたのです。でも、それだけではありません。
今、自分が存在しているのは、両親がいたからで、両親がいたのは、祖父母がいたから……。これを10世代遡ると自分には1024人の先祖がいることになります。30世代まで遡ると、なんと10億人以上(!)の先祖がいることになります。この壮大な命のリレーに一人でも欠けると自分は存在していません。実りをもたらしてくれる自然への感謝を忘れずにいた古代の日本人はまた、自分という実りを与えてくれた先祖へも感謝の心を持ち、そうした文化慣習を脈々と次世代に伝えて来たのです。
「彼岸」という言葉ですが、こちらも「お盆」同様に仏教用語です。仏教では、三途の川を挟んでこの世は「此岸」、あの世は「彼岸」。ちなみに神道では、神話にあるように、死者の往く「根の国」は、海の彼方、または地底にあるという考えです。仏教伝来後、日本の伝統的な慣習(神道)が仏教と習合し、「お盆」同様に、仏教用語の「彼岸」がその慣習に定着したのです。
「暑さ寒さも彼岸まで」(春分の日は春の彼岸)という言葉が日本にはありますが、9月でもまだ残暑厳しいロサンゼルスでも秋分の日を境に夜が長くなります。秋の夜長が始まるこの日、秋の実りを授けてくれる自然と、10億人以上にのぼるご先祖さまたちに感謝の気持ちを伝えてはいかがでしょうか?
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。