ピアノの道
vol.50 コロナの時代の音楽
2021-02-05
コラム「ピアノの道」#50はCalMattersに発表されたJeff Leと私共著のオプ・エド「In the Age of Covid, the Arts will Help Us Grieve, Heal and Come Together」(2月2日付け)のまとめです。
ICUに無機質に鳴り響くアラームやモニター。COVID-19はカリフォルニア州で今だに毎日数百人の犠牲者を出し続けています。我々が今必要としているのは音楽です。音楽の治癒効果を研究する演奏家「Dr.Pianist」と、カリフォルニア州の安全保障と災害対応を担当した元公務員として、我々は公共医療と地域活性化のため音楽への投資を嘆願します。
音楽は患者と介護者のストレスと不安を和らげ、呼吸と心拍を正常化し、苦痛を緩和します。世界保健機構(WHO)も3000の研究を検証した結果、音楽を始めとする芸術一般の健康促進効果を推奨しています。米音楽セラピー協会は遠隔医療で感染リスクの高い人々や過疎地の住人の為の治療を奨励しています。呼吸器を付けられた患者さんも音楽で鎮静剤・鎮痛剤の服用が減るとの研究結果も複数あります。一方、コロナ禍で音楽療法士の多くが勤務時間を減らされたり解雇されました。
そんな中カリフォルニア州知事ニューサムの予算から1500万ドルが、特にパンデミックの影響を被っている地域のアーティスト500人を起用した保健教育キャンペーンや地域活性化に投じられます。サンフランシスコ市でも同様の企画が、医療に於いても長年差別待遇を受けてきたコミュニティーからワクチンへの懐疑心を取り除くための芸術キャンペーンを行います。
この様な政策はコロナ禍で失業率が特に高いとされる芸術分野への投資にもなり、その上医療のコスト削減に繋がります。2018年の研究では音楽鑑賞でICU患者一人当たり平均$2322のコスト削減に繋がったという結果が出ています。またイギリスの「Arts on Prescription(アート処方箋)」政策は投資に対し4~5倍の価値の報告をしています。
音楽はマスクやワクチンの代わりにはなりません。しかし音楽や芸術は私たちの命に意味を与えてくれます。人間としての尊厳を持ってお互い支え合い、ウィルスに打ち勝とうではありませんか。
Jeff Le (@JeffreyDLe)はトルーマン国家安全保障プロジェクトのパートナー 。前カリフォルニア州知事ブラウンの下でDeputy Director of External and International Affairs 及び Deputy Cabinet Secretary を務めた。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。