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コラム

キム・ホンソンの三味一体
vol.146 人々の中に潜む悪霊

2021-02-05

 「エクソシスト」という1973年に作られたアメリカのホラー映画があります。いわゆる悪魔払いがテーマのオカルト映画の代表作ですが、小さい時に観て本当に恐かったことを未だに憶えています。

 聖書の中にもイエスが人に憑いた悪霊を追い出す場面がいくつかあります。その中で一つとても変わったケースがあります。一般的に悪霊に憑かれた人は、初めから狂気な場合が多いのですが、これから話すケースは、最初は普通を装っているのですが、ある瞬間、突如と悪霊の本性を現し「ナザレのイエス、かまわないでくれ。我々を滅ぼしに来たのか。正体は分かっている。神の聖者だ。」(マルコ1:24)とイエスに叫びます。もちろん「黙れ。この人から出て行け」とのイエスの言葉によって追い出されるのですが、腑に落ちない点がいくつかあります。

 まず、この出来事の場所となっているのは、神を礼拝する会堂でした。汚れた霊に憑かれている人は町から離れたところに隔離し、会堂に出入りさせることは絶対にありません。しかし、このケースに限っては正気を保ったまま会堂に入り、普通の人々に混じってイエスの教えを聞いていたというのです。

 ともすれば、私たちは、悪霊に憑かれたということを、精神錯乱の状態のような、ホラー映画でみるような表面的な狂気として考えがちになります。しかし、実は、人間の日常の中でごく普通に人間を支配しコントロールする罪というものの虜になっている状態を「汚れた霊に取り憑かれた状態」だと聖書は言っているのかもしれません。

 罪に捕らえられている時、人間は聖なる神の力が自分に及ぶことを嫌います。例えば、お金にものを言わせてロビーをして、合法な形で人を搾取し、公害をばらまきながら多くの利益を得るような状況の中に、正義の神が来られることは迷惑なんです。やっと築けた自分達のみにとって都合のよい世界を壊されるのが嫌なんです。

 戦争や紛争、テロや虐殺を行っているのは悪魔ではなく、普通の人間です。身近なところで言えば、7人もの死者を出したあの米連邦議事堂の襲撃事件の犯人達も、普段は誰かの父親であり母親である普通の人だったに違いありません。

 2021年は、もうこれ以上、人々が罪に捕われ罪の支配を受けることがないように宗教者の一人として祈りたいと思います。

 毎週日曜日の午後3時からズームでの礼拝があります。ご興味のある方は是非メールでお申し込みください。 khs1126@gmail.com


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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キム・ホンソン

牧師、コラムニスト、元ソーシャルワーカー、日本人の奥さんと3人の子供達に励まされ頑張る父親。韓国ソウル生まれ。中学2年生の時に宣教師であった両親と共に来日。関西学院大学神学部卒業後、兵役のため帰国。その後、ケンタッキー州立大学の大学院に留学し、1999年からロサンゼルスのリトル東京サービスセンターでソーシャルワーカーとして働く。現在、性的マイノリティーをはじめすべての違いを持つ人々のための教会、聖霊の実ルーテル教会 (Torrance) と復活ルーテル教会日本語ミニストリー(OC, Huntington Beach)を兼牧中。

「このコラムへの感想や質問はこちらへ → khs1126@gmail.com
礼拝:日曜日午前10時(ハンティントンビーチ)、日曜日午後2時(トーランス)
お問い合わせ:携帯 (310) 339-9635」




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