キム・ホンソンの三味一体
vol.148 アジアン・ヘイトに関して
2021-04-16
クリスチャンならばイエスが死から復活したことくらい誰だってみんな信じています。しかし、聖書の中にはイエスの12弟子の一人だったにもかかわらず、イエスの復活を信じなかった人物が一人いました。その名はトマスです。彼は復活したイエスが最初に弟子達に現れた時、そこにいませんでした。他のみんながイエスに会ったことを話しているのを聞いた彼は、自分の手でイエスの手の釘跡に触り、槍で刺された脇腹の傷に手を入れてみるまで自分はけして信じないと断言しました。しかし、彼は人と比べて特に疑い深いわけではなかったです。むしろイエスに対して忠実で勇敢な男でした。生前のイエスが命を狙われているのを知って恐れていた他の弟子達に向かって「先生と一緒に死のうではないか」と言ったのも彼です。しかし、彼も他の弟子達同様、イエスが十字架にかかった時、自分も処刑されることを恐れてイエスを見捨てて逃げてしまいました。しかし、イエスが復活したという噂を聞いた彼は、戸に鍵をかけて家に閉じこもっている他の弟子達と違って、外に出て自分なりにイエスのことを追っていたと思われます。そして、ちょうど自分がいない時にイエスが弟子達のところに訪れたことを知り、ひがんでしまってあのような暴言を吐いたのではないかと思います。
そのことから一週間後、イエスは再び弟子達のところに来てトマスに「釘跡の傷に触って脇腹に手を入れてみなさい」と語りかけます。相手に傷口を差し出すということは、十字架の苦難と死へと精神的に引き戻されてもかまわないという覚悟を示す行動です。イエスはひがんで暴言を吐いたトマスを「こいつは使えない」と切り捨てないで、彼の中にある良いところを理解し彼を信じたのです。そして相手の中の可能性を信じるというイエスのこの行為によって、トマスは「わが主よ、わが神よ」と復活したイエスを信じることができました。
近頃、アジアン・ヘイトによってアジア系の人々がターゲットにされています。昨日は私の住んでいるハンティングトン・ビーチでKKKの集会があったようです。「もうアメリカはダメだ。本当に自国に帰ることも考えている。」との声も聞こえてきます。
コロナの余波による失業や経済的な困難に加えて一年以上も続く色々な制約によって疲れ切った人々が、怒りの捌け口をアジア系に向けているのかも知れません。しかし、それらの一部の人々に隠れて見えていない圧倒的多数の良き友であり良き市民のことを覚えて、それらの人々を信じて希望を持ちたいと思います。しかし、だからといってヘイト・クライムに対する警戒を緩めて良いと言っているのではありません。LAPDからの情報をもとに知人らが「ヘイト・クライムへの対処法」というマニュアルを作り、私がそれを日本語に翻訳しました。ご希望の方に無料で配布しますのでメールでお知らせください。khs1126@gmail.com
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。