ピアノの道
vol.57 ルバートの人間性
2021-05-14
音楽用語「ルバート」の語源はイタリア語の「盗む」。規則的な拍子を適度に緩める事を「Tempo Rubato(時間を盗む)」と言います。ジェットコースターが急下降する前のフワリと浮くような瞬間。告白の言いよどみ。美しさに接して息が止まる瞬間。私はそういうイメージで「ルバート」を取ります。
ワクチン配布も順調に進み、ロサンジェルスカウンティーでは5月6日から感染予防のための規制レべルがイエローティアに緩和。音楽産業にも明るい兆しが出始めています。私も先月末に急にいくつか録音プロジェクトの話しが舞い込んできました。久しぶりの本番に向けての練習は楽しいですが、張り切って練習し過ぎないように気を付けます。肉体疲労よりも、脳が飽和状態になる事を避けるためです。(もうちょっと練習したい!)と思うくらいの所で敢えて休むと、脳みそが勝手に復習してくれます。これもルバート。ゴールにまっしぐらよりも人生に面白味と深みが出ます。今週末は本番3日前に敢えて海岸に行ってきました。引く波の中で転がる小石の音に、超速パッセージを音楽的に弾く方法のヒントを得ました(リンクでヴィデオをご覧になれます。https://youtu.be/MK0GS3v9N7E)。脱力をして勢いに身を託すことで優雅さが自然に表現できます。
今月3日に離婚発表でニュースを賑わしたビル・ゲイツは毎晩のお皿洗いが日課だそうです。巨万の富をコロナ禍で更に増やし続けるジェフ・ベーゾスも同じく。単純作業には瞑想と同じように幸福感や創造性を高める効果があるそうです。一つの事だけ根詰めてやり続けるのは、逆効果なんですね。目を凝らして一点をずっとにらみ続けてると焦点がぼけてきてしまいに見えなくなるのと同じです。他の物を見たり、目をつぶったり-人間の脳は常に多様な刺激を処理するように出来ているみたいです。料理は五感を総動員するため、脳の刺激にはとても良いそうです。そして勿論音楽も!
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※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

