日刊サンクラシファイド

ロサンゼルスの求人、クラシファイド、地元情報など

日刊サンはロサンゼルスの日本語新聞です。 記事は毎日更新、求人、クラシファイドは毎週木曜5時更新。

コラム

受喜与幸 ~受ける喜び、与える幸せ~
vol.19 自分にばかり目を向けていると不幸の芽が育つ2

2022-03-08

 ありがたいことに、私は、「他者を思いやること」を家庭生活の中で自然に学ぶことができました。そういう教えを授けてくれた両親には本当に感謝し、尊敬もしています。自分が親になってからはいっそう、それを子どもに伝えることがいかにむずかしいかを痛感しました。

 私の息子はハイスクール時代、いろいろと問題を起こし、親を悲しませることがありました。何度か息子を叱(しか)り、話し合いの機会ももったのですが、彼の不良行為はあまり改まらず、父である私も、彼をなかなか説得することができません。話し合いはこじれて、とうとう息子は最後にこう言い放ちました。

 「自分の命を自分でどうしようと、ぼくの勝手じゃないか」

 これを聞いて私は、私が当たり前に父に教えてもらった「他者を思いやること」を、自分の息子には伝えきれていなかったことがわかり、親としての自分をものすごく反省しました。

 そこで私は拙(つたな)いながらも息子に語りました。単独で生きている、生きていられる命などひとつも存在しないこと。ひとりですべてをまかなえる存在も、この世には皆無であること。みんなつながっていなければ生きられない弱い生き物で、あらゆる命は互いに支え、支えられることでやっと生存できていること。

 「だから、おまえが自分の命を粗末にあつかえば、おまえは満足かもしれないが、池に石を投げ込んだように波紋が広がり、おまえの親が苦しむ。きょうだいが悲しむ。友だちが心を痛める。知り合いが心配する。それだけおまえの言動にも影響力があり、責任もある。自分の命を自分だけの所有物、独占物だと考えるのは大きな間違いだ。それを自分の好き勝手に使うこともけっしてゆるされない」

 それがどれほど有効な説得になったかはわかりません。それからも紆余(うよ)曲折あり、時間もかかりましたが、息子は少しずつその心を自己や利己から離して、周囲にも目を向けるようになってくれたようです。不良行為も噓(うそ)のように治まって、日本語を習得したいという動機から入学した日本の大学を卒業し、今は働いています。

 自分の心が自分のことだけで占められたとき、人は知らぬうちに不幸の芽を育てるようです。だから、心に自分以外の領分を広げていくこと。それが幸福の種を蒔(ま)くことに通じると私は信じています。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
Facebook   Twieet

新原豊

新原 豊(にいはら・ゆたか)
1959年東京生まれ。ロマリンダ大学宗教学部卒、同大医学大学院卒。1989年よりUCLAハーバー総合病院にて血液内科と腫瘍内科に所属。ハーバード大学で公衆衛生学修士課程を修了。2005年よりUCLA医学部教授に就任。Emmaus Life Sciences, Inc. 会長兼CEO、EJホールディングス㈱ 取締役会長。Emmaus Life Sciences, Inc. の株式シンボルは、”EMMA” です。




[ 人気の記事 ]

第230回 碧い目が見た雅子妃の嘘と真

第249回 尻軽女はどこの国に多いか

特別インタビュー アシュラムセンター主幹牧師・榎本恵氏 後編

NITTO TIRE 水谷友重社長 ロングインタビュー① アメリカについてよく知ることが大切

第265回 天才と秀才、凡才の違い

第208回 日本と北部中国に多い下戸

第227回 グレンデールに抗議しよう

特別インタビュー アシュラムセンター主幹牧師・榎本恵氏 前編

第173回 あなたの顔の好みは?

NITTO TIRE 水谷友重社長 ロングインタビュー③ アメリカについてよく知ることが大切



最新のクラシファイド 定期購読
JFC International Inc Cosmos Grace 新撰組1月 Parexel pspinc ロサンゼルスのWEB制作(デザイン/開発/SEO)はSOTO-MEDIA 撃退コロナ音頭 サボテンブラザーズ 





ページトップへ