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コラム

ピアノの道
vol.81 ピアニストにとってのご馳走

2022-05-12

 フルコン(フル・コンサートグランドピアノの略)は鍵盤からお尻まで275cmあります。お値段も上限は1500万円くらい。日常的な大きさや値段ではありませんよね。でも、最高の状態のフルコンでしか出せない音色、創り出せない音世界、歌い上げられない曲想があるんです。

 一番小さなアップライトですら200キロ以上あるピアノですから、運送も高く付きます。だからピアニストは会場付きのピアノで演奏します。アップライトで弾くこともベビーグランドで弾くこともあります。時には「電子ピアノでもよろしいですか…?」と聞かれる事もあります。フルコンでも、きちんとメンテが出来ていない楽器は鍵盤と鍵盤の重さが違ったり、調律が狂っていて綺麗に響かなかったり、悪戦苦闘を強いられることもあります。だから余計、音響もフルコンの状態も整った状態で演奏できる機会は物凄く嬉しいのです。

 それはお料理に例えると出張シェフの様なものなのだと思います。普通の家庭のキッチンで冷蔵庫にあり合わせの具材を使ってもそれなりの料理を創る事は出来る。でも、最新の調理器具や研ぎ澄まされた様々な包丁が揃った本格的な台所で、最高級の材料を使って初めて作れる料理があり、醸し出せる味わいがあり、そしてそういう環境で湧き出てくる創造性や発揮できる本領がある。

 最高級の楽器を音響が完璧に整えられた演奏会場で弾くとき、私が弾く一音一音は、私だけが発信しているのではありません。楽器の製造者も調律師さんも音響設計士も会場の建築家も皆の一生懸命なこだわりと職人魂が、音楽となって解き放たれるのです。そういう時、私は本当に身に余る光栄を感じます。そして、そういう会場やピアノで創り出す音楽時空を集まってくださった聴衆と共にする事を可能にしてくれる平和という物への感謝が身に沁みます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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