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コラム

ピアノの道
vol.83 スマホ前後

2022-06-17

 ギリシャに行っていました。演奏・出会い・美味・絶景に充実したキラキラした10日間でした。帰国のフライトの7時間前に不必要となったコロナ陰性証明を巡ってドタバタなど、2022年ならではのハプニングも過ぎてみれば良い思い出です。

 私が最初にアテネに飛んだのはスマホ前です。豪華客船で週一・二回独奏会をすれば、乗客扱いでお給料も頂け、その上世界を見て回れる...当時の私にとっては夢の様なお仕事でした。思えば経費は請求できた筈なのですが、何しろ貧乏音楽留学生。私は武者修行の様に空港からピレウス港まで公共交通機関を駆使し、地下鉄から船までかなりの距離を汗だくになって歩いたのです。

 飛行機を降り次第、空港の案内所をまず探し目的地への行き方を確認するのは慣れっこでした。地図を頂き、ユーロ前のそれぞれの国の貨幣を握りしめ、ドキドキしながらいつも必死だったのを覚えています。荷物は演奏用の装束の他に、かなりの本と楽譜もあったので重かった。それをずるずる引きずりながら古都の石畳を恨めしく思ったのを体が覚えています。

 それを思えば演奏旅行も楽になりました。現地の地図は勿論、行き方と到着予想時刻まで全てスマホ一つで分かります。読み物も楽譜も全部タブレットに収納されて、荷物も随分軽くなりました。でもお手軽になるから失われるものもある。

 書物をスーツケースに入れて旅行していた時代、私は色々な国で沢山の人に荷物の上げ下ろしを手伝ってもらいました。バスの中でいつまでも地図を眺める私を囲んで数人のおばあさん達が通じない言葉と身振りで懸命に行き方を教えてくれたこともありました。そして何よりスマホ以前は興味が外に向きました。人間観察をし、空気の匂いを嗅ぎ、現地の動向に色々想いを馳せました。道に迷ったら人に聞けば見知らぬ人の笑顔と親切に触れる事ができました。

 今回行ったギリシャの離島では、インターネットが繋がらない場所が多々ありました。むしろそれがありがたい、そんな旅でした。デジタル音を発信し続けるスマホを手中に収めている私たちだからこそ、生の音楽の価値を再発見できるはず—信念を持って活動を続けます。

この記事の英訳(とギリシャの写真)はこちらでご覧いただけます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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