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コラム

ピアノの道
vol.94 繰り返す愛おしさ

2022-12-02

 「こんにちは。」「いい天気ですね。」「寒くなりましたね。」「お気をつけて。」こんな儀式の様な決まり文句が愛おしく感じられるようになったのは、コロナ禍の非常時を経たからでしょうか。師走の慌ただしさの中、交わす挨拶でフッと気持ちが和むからでしょうか。

 楽譜の『繰り返し』。このサインの中にある部分を二回弾いてください、という作曲家からの指示です。下の例では2小節ですが、大抵は曲や楽章の区分をリピートします。


 音楽学生時代、試験やオーディションや通し稽古の様なミニコンサートでは、時間短縮の為にこの繰り返しを省いていました。一度弾いた箇所を二度目弾く音楽的な意義が分かる若手は少ないのではないでしょうか。一度目と二度目の解釈を大きく変えて、自分の音楽性の幅を見せつけようと創意工夫を凝らしていたら、先生に言われたことがあります。

 「すでに体験した音楽をもう一度味わい、それだけの時間が経過する事で、二度目を体験する奏者や聴き手は一度目から進化している。だから同じ弾き方をしてもその音楽は違う意味を持つんだよ。」

 どんな時代にも世界中で、冠婚葬祭には音楽が付き物。人生や世界観を大きく揺らぐ時、音楽による「変わらない物もある」「みんな一緒だ」という確認が安心感をもたらすのだそうです。

 もう何度か聞いた友人の笑い話に、涙が出るほど笑えるのです。チキンの方が美味しいと思いつつ、七面鳥とクランベリーソースに、渡米した頃の思い出が尽きないのです。初対面の人と実家からの最寄り駅が同じだと、駅前のお店や通りの話しをしていると嬉しくなるのです。そんな私は最近、バッハでもモーツァルトでも繰り返しの指示に従って二度目も弾くようになりました。そして、しみじみとするのです。

この記事の英訳はこちらでお読み頂けます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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