キム・ホンソンの三味一体
vol.183 自分にとって何なのかに気づくことの大切さ
2023-01-20
ドイツのロマン派作曲家リヒャルト・シュトラウスが世界的な名声を受けるようになったのは、彼が作曲したオペラ「サロメOp.54」(1905年)の大成功のおかげだそうです。サロメとはイエスの時代にガリラヤの領主だったヘロデの義理の娘の名前です。サロメはヘロデの誕生を祝う宴で踊りを披露し、そのご褒美として何でも与えると豪語したヘロデに対して、時の人だった洗礼者ヨハネの首を要求するのです。それは、サロメの母親であるヘロディアスが夫を捨て、夫の異母弟であったヘロデと再婚したことを、ヨハネが律法に反すると批判したので、彼を殺そうとヘロディアスが仕組んだことでした。結局、ヘロデは皿の上にのせたヨハネの頭をサロメに与えます。そのようにして殺された預言者(神のメッセージを民に告げる者)ヨハネでしたが、実は彼の本当の使命は、罪を犯した権力者に立ち向かうことではありませんでした。彼の使命はただ一つ。それは救い主として来られるキリストを誰だか見極め、人々に指し示すことだったのです。実は、ヘロデに捕らえられる直前に、ヨハネはその使命を全うしているのです。彼は人々にイエスを指し示しながら、見よ、人類の罪を代わりに負って人類を救うために神が遣わされた救い主を、と宣言しました。と同時に、彼はそれまで「私はこの方を知らなかった」とも言いました。しかし、ヨハネとイエスは親戚同士で幼い頃からよく知っていました。だから彼がここで言いたいのは、イエスを誰だか知らなかった、ということではなく、人類にとってイエスが何だったのかを知らなかった、ということなのです。
私たちもある人物や現象などに対して、その表面だけを見て、それが私たちにとって何なのかを見落とすことが多いのではないでしょうか。洗礼者ヨハネを殺したヘロディアスも、人々がヨハネを預言者として高く評価し尊敬していた中、彼が罪の悔い改めを勧めるために神が自分に遣わした預言者だとは知らなかったのです。ヨハネだけではありません。イエスだって同じです。歴史的事実としてのイエスについての記録、その教え、そして、多くの芸術家達の作品として残されたイエスを題材にする絵画や彫刻、音楽や文学作品など、イエスに関する記録や情報は数え切れないほどあります。しかし、イエスが自分にとって何なのかを知る人々は決して多くはないのです。
礼拝:日曜日午前10時(ハンティントンビーチ)、日曜日午後2時(トーランス)
お問い合わせ:khs1126@gmail.com (310) 339-9635
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