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コラム

ピアノの道
vol.101 ピアノに教わる生き方

2023-03-17

 「どうしてそんなに速く弾けるのですか?」演奏会にいらしたお子さんにびっくりしたように聞かれる事があります。

 拍と拍の間に沢山の音を弾くパッセージがあります。8、12、16、32。。。これを「速い」とか「難しい」と思ってしまうと、大抵上手く弾けません。代わりに、その沢山の音の集大成でしか表現できない音楽的な意味を考えます。感情の爆発。風圧や水流のような勢い。真珠の転がり。超自然的な圧倒性…イメージが明確になると、一つ一つの音よりも音と音の繋がりが成す意味を表現せずにはおられなくなります。

 「『ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド』と一音ずつ速く弾こうと思うと大変だけれど、ドからもう一つ上のドまで線を引こうと思うと早さが必要になるんだよ。」と子どもには説明します。

 パンデミックで冬眠状態が続いた音楽業界にも活気が戻ってくる最近、私の活動も充実して来ました。この記事は日本に向かう飛行機の席で書いています。広島―兵庫―愛知―和歌山―東京と10日足らずにぎっしりと予定が詰まった旅程。(乗り換え間違えないか。)(時間通りに到着できるか。)(時差に負けずに寝て食べてコンディショニングがちゃんとできるか。)考え始めると不安もあります。でもこれって要するに一つ一つの音(=出来事)に囚われずにその意味に集中すると楽に弾ける(=生きられる)というのと同じだなあ、と思うのです。音楽の治癒効果を皆に届け、日米や異文化の橋になるという夢に集中しよう。そうすると好機に恵まれた事が嬉しく、勇気と意欲がワクワク感に繋がっていきます。コロナ禍で発表の場がなかった時期に蓄えた(発表したい)(人と交流したい)(役に立ちたい)という思いがばねになります。

 私がピアノ人生に病みつきなのは、練習でのこういう気づきがより良い生き方・考え方のヒントになるから、という事もあるんです。

 サクラが丁度見られる時期の帰国は久しぶり!楽しみです。

この記事の英訳はこちらでお読み頂けます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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