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コラム

ピアノの道
vol.107 6月19日はジューンティーンス

2023-06-16

 6月19日はJuneteenth(June nineteenthの略)という黒人奴隷解放の記念日です。別名Freedom Day(自由の日) , Jubilee Day(歓喜の日), Cel-Liberation Day (Celebration=「祝い」とLiberation「自由化」を足して二で割った造語)や the Black Fourth of July(黒人の7月4日(=独立記念日))などとも呼ばれて来ているそうです。1980年以降テキサス州を皮切りにこの日を正式な祝日とする州が増え続け、2021年に正式な米国連邦の祝日になりました。

 1865年6月19日は、北軍の将軍ゴードン・グレンジャーがテキサス州のガルベストンで奴隷解放の公布を行った日です。リンカーンが奴隷解放宣言を発令したのは1863年の1月1日でしたが、テキサス州には北軍の存在感が薄く、距離もあったために、奴隷の無料労働を少しでも長く活用するためにわざわざテキサスに移住をする奴隷所有者も多かったということです。1865年の時点ででテキサス州には25万人近くの奴隷が住んでいたとされています。

 ゴードン・グレンジャーの奴隷解放を発表を受けた瞬間、行くあても無いのにすぐさま歩き始めた奴隷が多くいた、という逸話を読みました。他の州の農場に売られてしまった家族と一刻も早い再会を望んだ人も、兎に角現状から抜け出したかった人も、その苦渋が想像される逸話です。

 私がJuneteenthに思う事は、アフリカ系アメリカ人の音楽の歴史です。黒人霊歌。ゴスペル。タップダンス。ジャズ。ブルース。想像を絶する極限状態を何世代も強いられてきた人々にいつも音楽があった。触発されます。
 似たような特有な音楽の伝統がアジア系アメリカ人に無いのはなぜなのか。そんな時私が思い出すのが、4年間に及ぶ収容所生活を2歳で始めたLA在住のノブコ・ミヤモトです。戦後アジア系アメリカ人としての音楽アイデンティティを探求する音楽家として、そして多様性の中にある人間性を謳う社会運動家として、在米アジア人や有色人種の社会地位と自尊心向上に多大な貢献をしました。彼女が仲間たちと収録したアルバム「A Grain of Sand: Music for the Struggle by Asians in America(一粒の砂:アメリカに居るアジア人の闘争の為の音楽)」(1973)を是非このJuneteenthご清聴ください。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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