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コラム

ピアノの道
Vol.109 日本の音

2023-07-28

 帰国中の日本からの発信です。

 日本の緑は濃い!(水も緑も本当に豊かな国だなあ)と今更ながらに思います。時差ぼけの超早朝、街の目覚めの前の住宅街を散歩をしていると文字通り耳をつんざくような勢いでミンミンゼミが力いっぱい鳴き始めます。何だか心身が浄化されるような元気さです。

 私を迎えに来てくれた父の車のラジオの文化放送。「おとなりさん」という番組の火曜日特別コーナーの「音鳴(おとなり)さん」に思わずクスリ。視聴者から送られて来た「何らかの音」をあてっこするという、お気楽な企画です。MCさんものんびりとした口調。

 日本の「デデーポッポー」という鳩の鳴き声が懐かしく感じられるのはなんででしょう。LAにも鳩は一杯いるのに。皆鳴いてるはずなのに。

 懐かしい音に包まれての日本での演奏です。汗を拭きながらお客様たちがご来場して下さいます。アメリカで培ってきた私の音を故郷で皆さんに受け止めて頂ける喜びで、音の粒が一つ一つ鍵盤から飛び跳ねて客席に吸い込まれていくような快感。

 公開レッスンもします。狭い防音室で普段練習されているせいでしょうか。それとも謙譲の美徳でしょうか?音楽学生でも愛好家の方でも日本人は内に秘めた想いと実際に発せられる音楽にギャップがある場合があります。アメリカが長い私だからこそご提供できる突破口があると思っています。「鍵盤を貴方の心への鍵だと思ってください。鍵を一つ一つ開けて、ご自分の気持ちを開放するつもりでメロディーを会場に解き放ってみて下さい。」「鍵盤の前のご自分に心地よい演奏を目指すのではなく、最後尾席の後ろにある非常口に思いの丈をぶつける気持ちで弾いてみて下さい。」そんな事を言うと全く別人の様な演奏になる事が多いです。会場で聴講されるお客様からも「おおお!」と言う声と共に思わず拍手が出たりします。嬉しい瞬間です。

 在外日本人の我々がこれからの日本のために出来る貢献というのは何なのか。私はこれからどうやって今までアメリカで経て来た自分の修行や人生と、日本人としての自分の価値観の折り合いをつけて生きてくのか。色々考察しながら、コロナ禍を経て徐々に再開されて来た日本での音楽活動が嬉しくてたまらない日本滞在です。

この記事の英訳はこちらでご覧いただけます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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