キム・ホンソンの三味一体
vol.213 卓越した戦略
2024-08-30
先日、犬についての興味深いドキュメンタリー映画を見ました。狼から今に至った犬は、今でもDNAの99%が狼と一致するそうです。では犬はどうして狼として生きることをやめて人間との関係を選んだのか、という問いですが、映画ではとても説得力のある仮説を展開してみせます。
今では絶滅危惧種の狼ですが、かつては熊をはじめ他の猛獣と並んで食物連鎖の頂点に位置していたそうです。しかし、人間が道具を使うようになり、その頂点に君臨するようになってからのある日、狼の群れの中のある個体が、人間の食べ残しに興味を示すようになるのです。そして、徐々に群れの中にいる時間より人間のそばにいる時間の方が長くなり、最終的には人間のそばで、人間と共に生きることになった、というのです。映画ではこの人間との共生を、その個体の卓越した戦略だったと定義します。狼として生きるより人間の友として生きる方にメリットがあったというのです。リーダー雄としての地位を守るために挑んでくる他の狼と戦うことのリスク、勝ったとしても怪我を負うリスク、また雌だとしても野生の中で狼として直面するリスクを負うよりは、人間との共生の方が安全だと見たのです。
ところで聖書に登場するすべての人間の先祖であるアダムとエバは、ちょうど逆の選択をしました。禁断の実を食べて知恵を得た二人は、自分たちの理想を達成し欲求を満たすために、自分を創造した神の保護のもとを離れるのです。その結果、人間は未開の野生の中を自分の力で生き抜かなければならなくなったと言うのですが、ある意味、今の私たちにも当てはまるところがあるのではないでしょうか。一見、自分たちの手で理想を実現し、自らの欲求が十分に満たされる洗練された社会に生きているように見えます。しかし、真実は、生まれた時から成功者になるための競争がはじまり、人と比べることでしか自分が幸せかどうかを確認できず、SNS上においても比較と競争の日々は絶えず、それはまるで野生の中で生きる狼たちの姿を彷彿とさせます。神のもとを去った人間は、結果的に物が溢れても決して満足できず、SNSでも人間のつながりの欠如を補う術はなく、孤独を抱え疲れ果てているのです。
神との関係を取り戻す選択。もしかすると、それこそ今の私たちにとっての卓越した戦略なのかも知れません。「疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。」(マタイ11:28) これは神との関係に戻るようにと招くイエスの言葉です。それが誰であれ何の条件も資格も問わず神のもとに来る者すべてに漏れなく休みが与えられるのです。
礼拝:日曜日午前10時(ハンティントンビーチ)、日曜日午後2時(トーランス)
お問い合わせ:khs1126@gmail.com (310) 339-9635
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

