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コラム

ピアノの道
vol.138 時の花

2024-10-04

 南カリフォルニアならではの楽しみは色々ありますが、公園や庭に鈴なりになる果実の種類の多さもその一つではないでしょうか。レモンや金柑などの柑橘類は勿論、日本では聞いた事すら無かったサボテンの実の数々や、イチジクやザクロ…鑑賞するだけでも楽しいです。今朝庭仕事をしていたら、お隣から枝を伸ばすグアバの小さな実がいくつか転がっているのを発見。(もう今年もそんな時期か…)残暑の中の思いがけない秋の予告です。見上げると、緑色のまだ固い果実が一つ、また一つと段々見え始め、気が付くと星の数ほどもあるんです。その中で控えめな黄色に染まった数個に手を伸ばすと、引っ張ってもまだ枝にしがみつく実と、触っただけで手の中に落ちてくる実があります。
 
 「時」という語を含むことわざは多い中、熟れた実がホロリと落ちる感触で「時の花」という言葉を思い出したのには訳があります。ミヒャエル・エンデ作「モモ」は「時間とは何か」というテーマと向き合う、スマホとAIに侵された現代人に読んでほしい作品です。そのクライマックスで時間の司祭「マイスターホラ」がモモに見せる時間とは、大きな振り子の揺れに合わせて咲いては消える壮大な花です。「時間の芸術」と言われる音楽の道を歩む私は、よく「モモ」のこのシーンを思い出します。それぞれの音が「咲く」か否かはタイミングの問題で、それを極めるのが音楽性だと思うのです。メトロノームに合わせて弾くのはまだ枝にしがみつく実をもぎ取るのと同じです。時計やカレンダーに縛られて生きるのも同じく。
 
 コロナまでは次の演奏会や演奏旅行までが私の時間の単位でした。でも「ステイホーム対策」で季節の移り変わりを初めて一か所で体験し、私の時間の感覚や音楽観が一皮剥けた気がします。「速く・正確に」を目指して練習を重ねたピアニストが、余韻に耳を澄ますようになりました。

この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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